「ねぇ、アンタ達見なかった?」

ナミが片手に可愛らしいピンクのリボンがかかった箱を持って甲板に上がってきた。

「オレ見てねぇぞ。」

まずお気に入りの船首に座っていたルフィが首を横に振る。
続いて甲板で何やら武器(らしきもの)をいじっていたウソップも首を振る。

「おれ、さっきキッチン行くの見たぞ。」

ウソップの作業を隣で見ていたチョッパーが、サンジがいるキッチンを指差した。

「そ、ありがとうチョッパー♪」

楽しげに鼻歌を歌いながらナミはキッチンへと足を向けた。





「あぁvvナミさんvお茶ですか!?それともデッザ〜トvですかぁ〜vvv」

「そうじゃないの、ここにいるかしら?」

厨房のドアを開けると夕食の下準備をしていたサンジが手を休め、入ってきたナミの方へ糸の切れた凧のように漂いながらやってきた。の名を聞くと一瞬体を硬直させたが、すぐにいつもの笑顔に戻りナミに向けて頭を下げる。

「さっき迄ここでお茶を飲んでたんですけど、飲み終わってから何処へ行ったか・・・すみません。」

「そう・・・ありがと・・・」

ナミはため息をつくと足取りも重く厨房の扉を開けて一歩外へ足を踏み出した。

「・・・サンジくん?」

「はい。」

踏み出した足はそのまま、厨房にいたサンジの方を振り返るとナミはにっこり笑った。

「ウソつくと・・・承知しないわよ?」

一瞬緊張した空気が厨房を包んだがサンジの表情は先程と変わらない。

「ナミさんにウソなんてつきませんよ。」

「ならいいのよ。美味しい夕食期待してるからね。」

「勿論!ナミさんにはサンジ特製愛のフルコースをご用意させ・・・」



バタン



サンジが全て言い切る前に厨房の扉を勢いよく閉めた。





が行きそうな船室は全て探した。
クルー達にも確認したが全員知らないと言う。
ナミは最後に残ったゾロの元へ足を進めた。
ゾロは見張りをしながらいつもの鍛錬を行っていた。
見晴らしのいいその場所に、ナミの探し人であるの姿はやはり何処にも無かった。

「・・・アンタに聞いても無駄だと思うけど、知らない?」

「んあっ?・・・アイツ・・・なら・・・」

ゾロは剣の先に錘をつけたものを両手で上げ下げしながらナミの質問に答えた。










「サンジくん!!」

バンッと言う激しい音と共に調理場のドアが外れた。
調理場では冷凍マグロのように凍りついたサンジと、その足元で小さくなっているの姿があった。

「ウソついたら承知しないって言葉・・・聞こえなかったわけじゃないわよねぇ?」

「ハイ、ナミサン・・・」

抑揚を抑えたナミの声は今のサンジには死刑執行のカウントダウンにも勝る恐怖だった。
返事をするため振り向いたサンジの耳を引っ張るとナミは声を大にして絶叫した。



「あんたサイッテー!大っ嫌い!!」



船全体が揺れるような大声は・・・外にいた全員が思わず厨房の方を振り返ったほどだった。

ナミ・・・サン

再起不能状態で床に倒れたサンジの隣には、おろおろしたがナミとサンジの顔を交互に見つめていた。
噴火してしまったナミを止められる勇気ある人間などこの船には存在しない…。

「ナミ・・・ごめんなさい。あたしがサンジさんにお願いしたの・・・だからサンジさんの事嫌いにならないで・・・。」

が俯きながらナミに向かって声を掛けた。その声は震えていて、見ている方の胸が痛くなるくらいだった。
ナミはに気付かれないよう大きく深呼吸をしてから床にしゃがみこむとの頭に手を置いた。

はそんな事気にしなくていいのよ。」

「でも・・・」

「そんな事より、どうして隠れたりしたの?あたしはそれが知りたいわ。」

真っ白に燃え尽きたサンジの事はそんな事ですまされてしまった・・・哀れな人である。
はじっとナミの顔を見つめ、やがて小声でぽつりぽつりと話し始めた。

「ナミが白い箱を持ってる時ってあたしにお洋服くれる時だよね・・・」

「あら、良くわかったわね。」

「お洋服くれるの嬉しいんだけど・・・あたし・・・」

それから先、は言葉を飲み込んでしまって中々続きを話さない。

「大丈夫よ、が何て言ったってあたしは怒らないわ。」

「・・・嫌いにならない?」

「なるはず無いでしょ?あたしはが大好きよ。」

他のクルーには決して見せない母性溢れる笑顔を見てはようやく続きを話し始めた。

「あたし・・・可愛い服よりもナミみたいなカッコイイ服・・・着たい。ナミみたいにカッコ良くなりたい!」

「え?」

きゅっとナミの服の裾を掴んで見つめるの目は真剣で・・・ナミは思わず手にしていた箱を床に落としてしまった。



が船に同船するようになってから、ナミは母親のようにの世話を焼いた。
愛情に飢えていたの心にナミの心は温かく、もすぐにナミになついた。
ある町に着いた時、いつまでも自分のお下がりを着せるのは可哀想と思ったナミが洋服を買ったのが始まりだった。
チョッパーの手厚い看護とサンジの愛情手料理ですっかり女の子らしくなったにナミは自分とは正反対の可愛らしい洋服を買ってに着せた。
それはクルーにも評判でも嬉しそうに笑っていたのだ。
だからそれ以降もに似合いそうな可愛い服を見つけては買ってきたのだが・・・まさかがそんな事を思っていたとは全然気付かなかった。



「あの・・・ナミ?・・・ごめんなさい。」

暫く口をつぐんでしまったのを怒っていると勘違いしたがペコリと頭を下げた。

「バカね、がそんな顔する必要は無いのよ。」

(やっぱりこんなに小さくてもオンナ・・・なのね。)

ナミは床に落ちた箱を拾い上げると目の前にいたに手渡した。

「これで最後にするから受け取ってくれる?今度何処かの島に着いたら、二人で一緒に洋服を見に行きましょう。」

「うん!ありがとうナミ!!ナミ大好き!!」

はにっこり笑ってナミに飛びついた。

「えぇあたしもが大好きよ。」

飛びついてきた体を受け止めると、太陽の香りがする体をそっと抱きしめた。





船に乗った直後は一切感情を表さなかった少女。
初めて笑った時には船中が大騒ぎになったほど、皆の注目を集めた少女。
まるで自分の片割れのように愛しい少女をこれからも守っていきたい。

ベルメールさん・・・母親ってこんな感じかしら・・・















それから2日後、とある島に着いた時の話。

「ナミのヤツ・・・また買ったみたいだぞ。」

「え!本当!!」

「そんなに使う金あるんならオレの借金なんてチャラにしろってんだ・・・」

「俺にも肉買ってくんねーかなぁ〜」

そう言ってルフィ達が見つめる視線の先には、様々な洋服を買い込んで帰ってきたナミ達の姿。
の洋服代は全てナミが支払っているという事がクルー達の今一番の謎であり驚きである。

は特別!アンタ達の借金は一切まけないからね♪」



ゾロ、ルフィ・・・
彼らの借金は増えるばかり・・・。





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取り敢えずワンピースドリの手持ちはこれで終わり。
また動いたら書き出すと言う事で・・・他の人もシチュエーションだけは頭にあるんですが、まだ動きません(TT)
さて、ナミさんです♪こんな彼女は結構好きです(笑)
いつもお金に厳しいナミがヒロインの為にはいくらでも使うと言う事が書きたかった!ただそれだけ!!
きっとヒロインの為ならみかんも食べさせてくれる筈・・・勿論タダで(笑)
そして一番可哀想なのはサンジ・・・ごめん、一番好きなキャラなのに・・・他にヒロインを上手に庇ってくれる人が浮かばなかったんだ。
ごめん!(どーん)さて、次にワンピース動くのは誰だろう!?